「うん……じゃあ、明日も来ていい? すぐ帰るから」
優ちゃんが微笑む。ほっとしたのも束の間、「ダメだ」と柔らかな声で、けれどはっきりと断られ呆然となる。
「頻繁に来る必要はないよ。見舞いに来るヒマがあるなら、その分練習に専念すること」
「必要とかじゃなくて、あたしが来たいんだよ! ……どうしても、ダメ?」
「歩。俺はお前が心配なんだよ。心配で、身体を治すことそっちのけで、部活に顔を出したくなるくらい」
ギョッとして、ぶんぶんと首を振った。
優ちゃんには早く戻ってきてほしいけど、そんな戻られ方をしてほしいわけじゃない。
「それはダメだよ! 何言ってんの!?」
「わかってる。でもお前は俺がいないと、簡単に部活をサボりそうだし……」
「行くよ! ちゃんと部活に行くし、朝練もするし、がんばるから! だから優ちゃんはおとなしくしてて!」
「おとなしくしてて、か。なんだかいつもと立場が逆転したなあ」
「笑い事じゃないからね!? ほんとにここにいてよ? 抜け出したりしないでよ?」
何度も念押しすると、優ちゃんは「わかったって」となぜか少し嬉しそうにうなずいた。


