◇
大丈夫だと、その人は笑った。
いつも通りの笑顔だったから、あたしは少し安心して笑い返すことが出来た。
「思い返せば、そういう兆候はあったんだよな。疲れがとれなかったり、ひどく眠かったり。食欲が減ってきてたのは、単に家事が億劫だったからかなって」
昨日病院にお見舞いに行くと、本当にただの疲れだと思っていたと、優ちゃんは微かに悔しそうに言った。
あたしもそう思ってた。ちょっと痩せたかもな、疲れてるんだなって。
でも優ちゃんだし、大丈夫だよなって。薄情な幼なじみだなと、自分に呆れた。
「担当医が白血病の名医らしい。昔は不治の病なんて呼ばれていた時期もあったらしいけど、医学が発展して白血病は治る病気になったんだって」
「それ聞いて、ちょっと安心したよ。あのさ……あたしに出来ることって、なんかある? してほしいこととか」
「歩……」
「何でも言って! あたしに出来ることなら、ちょっと出来そうにないことでも、何でもするから!」
優ちゃんの為ならなんだってする。なんだって出来る。
ベッドの脇でそう意気込むあたしに、優ちゃんは困ったように微笑んだ。
腕から伸びる点滴の管が痛々しかった。
大丈夫だと、その人は笑った。
いつも通りの笑顔だったから、あたしは少し安心して笑い返すことが出来た。
「思い返せば、そういう兆候はあったんだよな。疲れがとれなかったり、ひどく眠かったり。食欲が減ってきてたのは、単に家事が億劫だったからかなって」
昨日病院にお見舞いに行くと、本当にただの疲れだと思っていたと、優ちゃんは微かに悔しそうに言った。
あたしもそう思ってた。ちょっと痩せたかもな、疲れてるんだなって。
でも優ちゃんだし、大丈夫だよなって。薄情な幼なじみだなと、自分に呆れた。
「担当医が白血病の名医らしい。昔は不治の病なんて呼ばれていた時期もあったらしいけど、医学が発展して白血病は治る病気になったんだって」
「それ聞いて、ちょっと安心したよ。あのさ……あたしに出来ることって、なんかある? してほしいこととか」
「歩……」
「何でも言って! あたしに出来ることなら、ちょっと出来そうにないことでも、何でもするから!」
優ちゃんの為ならなんだってする。なんだって出来る。
ベッドの脇でそう意気込むあたしに、優ちゃんは困ったように微笑んだ。
腕から伸びる点滴の管が痛々しかった。


