君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている


深月の表情ががらりと変わる。試合に挑む前の鋭さが、黒い瞳に宿るのを見た。


「そうだよ。大将は副主将。深月がやる予定だった先鋒は2年の坪倉さんが入るって」


剣道の団体戦は、先鋒、次鋒、中堅、副将、大将の5人チームで行われる。

ただ強さの順番で並べられるわけじゃない。強豪校で全員が強い選手ならそれもありだけど、そうじゃない場合は並び方で勝敗が別れるから、その都度よく考えなくちゃならない。


団体戦は先に3勝した方が勝つ。絶対に勝てないと踏んだら、大将を移動させるのだって立派な戦略だ。

一番強い人が、大将の座につくとは限らない。もちろん相手のオーダーを読んで並べることも必要になる。


中堅は実力者が着くことが多い。流れを変えたり、勝負を決めることが出来る選手。

いまうちの部に、深月以上の適任者はいない。深月なら出来るって、あたしも思う。優ちゃんも深月の力を信じてるんだ。


「基本はそういう形にして、あとは本番の空気で決めてほしいって」

「……そうか。当日、主将はいないんだな」


残念そうにも、不安そうにも、寂しそうにも聴こえる声に胸が締め付けられる。

でもその痛みに気付かないフリをして、あたしは笑った。