君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている


その考えに至った瞬間、思い切り目の前の胸を押し返した。

突き飛ばす勢いでやったのに、深月はよろめきもしなかった。逆にあたしが反動で数歩後ろにタタラを踏む。

思っていたよりもずっと、深月の身体はたくましくて、男と女のちがいを見せつけられた気がした。


「なに、らしくないこと言ってんの」


やめてよ、もうやめて。

これ以上、あたしの世界を壊さないで。


「大会近いのに、泣いてるヒマなんてないじゃん」

「……大会近いのは関係ねぇだろ」


憮然とした顔で、深月はあたしを睨む。睨み返したいところだったけど、視線を合わせることすら気まずくて、そっと目を反らした。


「大ありだよ。特に深月は」

「俺がなんだよ」

「優ちゃんが出られなくなるってことは、柱が不在ってことでしょ。その代わりが出来るのなんてあんたしかいないじゃん」


普段こいつを褒めることなんてしないけど、剣道の腕だけは悔しいけど認めるしかない。

深月は強い。優ちゃんの次に。3年の副主将より強いんだ。それは部員全員が認めてる。


「オーダーは変更。深月は中堅だって」

「俺が? ……白木主将がそう言ったのか」