君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている


「す、すぐ泣く女は面倒くさいって、よく言ってるくせに」

「そういう奴は簡単に泣けるんだよ。軽いんだ、涙が」

「はあ? それ、誰のポエム?」

「お前なぁ……いいから、黙って泣いとけ」


大きな手が、後頭部をゆっくりと撫でる。温かな優しさで、涙をうながそうとする。

嫌じゃなかった。それどころか安心して、身体のこわばりが解けていく。


なんだろう、この気持ち。くすぐったくて、胸の奥が熱くて、大切にしたくなるような、この。


眠りを誘われるかのように瞼をおろした瞬間、浮かんだのは樹里の顔だった。

そして次々と、いままで見てきた彼らのあの表情がソーダの泡みたいに次々と浮かび上がってくる。


あたしが手紙を届けるたび、目の当たりにした恋の始まる顔。

照れくさそうにしていたり、はにかんでいたり、わざと不機嫌そうにしたり、色んな表情があった。男子も女子も、そんなに違いはなくて、とにかく幸せそうに見えた。

いつからかそういう彼らの姿を見て、悪いものじゃないのかもな、なんて思うようにもなって。それで……。


力強い腕の中で、ハッと目を見開いた。



もしかして、あたし……


いま、そんな顔をしてない?