君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている


語尾が震えた。急に息がうまく吸えなくなる。

平静を保ってたのに、いきなりどうして。大丈夫なはずだったのに。

だって、苦しいのはあたしじゃない。つらいのはあたしじゃなくて、優ちゃんなのに。


不意に前から腕が伸びてきて、頭の後ろを引き寄せられた。

柔軟剤の匂いが残る練習着の感触が、頬に当たってようやく気付く。深月に抱きしめられていることに。



「泣けよ」

「……なんで」

「泣きたいなら泣けばいい。ため込むと毒だ」


あの深月が、あたしに優しいことを言っている。嫌味のひとつもなく、ただ気遣ってくる。

いつもなら、気持ち悪いって突っぱねたと思う。でもいまは、悔しいほどにほっとした。


「泣かないよ。泣きたいのはあたしじゃない」

「主将は大丈夫なんだろ?」

「優ちゃんは……いつも通り、だった」

「なら大丈夫だな。死ぬわけじゃないんだから、そんな思いつめんな。とりあえず泣いて発散しとけ」


どこか遠慮がちに、肩を包む腕に力がこめられる。甘い匂いの奥に、深月自身の匂いを感じた。

途端にいまの状況を意識して、鼓動が乱れる。