出来ればそのまま、知らないまま、縁のない病気のままでいたかったけど。
知ってしまった。優ちゃんがそう、教えてくれたんだ。
「……本当なんだな」
しばらく黙り込んだあと、深月はただ確認するように、重苦しい声で呟いた。
あたしは力なく、竹刀を下ろす。その先を向ける方向を見失ったみたいに。
「こんなタチの悪い嘘つかないよ」
「だよな……ちょっと、いきなり過ぎて」
片手で口を覆って、深月は意思の強さを感じる瞳を伏せた。
動揺してる、あの深月が。当たり前だ。深月だってあたしと同じ高校2年の普通の男子で、身近な人が突然病気になったら慌てるに決まってる。
ましてやあの優ちゃんだ。あたしたちが大好きな、強くて頼りがいがあってかっこいい優ちゃんなんだ。
「病気とか、全然わかんねーけど……その、治るんだよな?」
「あたしだってそうだけど。治る病気だって言ってた」
「そう、か。よかっ……」
「でも、しばらく入院だって」
深月の声を遮って、伝えられた事実をまた、伝える。
これは顧問にも伝えられることだから、そのうち部員全員にも話があるはずだ。
優ちゃんは、今度の県大会に出られない。最後のインターハイに、出られないんだ。


