まだ行っちゃいけないってお母さんに言われてたけど、おとなしく待ち続けることが出来なくて、気づけば入院先の病院まで来ていた。

そこで白木のおばさん、優ちゃんの母親に久しぶりに会った。

おじさんの転勤先からこっちに帰ってきたことは聞いていたけど、あんまり印象が変わっていてすぐにおばさんだと気づけなかった。

ひどくやつれて見えた。それが慣れない土地での生活のせいなのか、それとも今回の優ちゃんの入院のせいか、その時はわからなかったけど……。


おばさんに連れられて、優ちゃんの病室に入ることができた時、理由ははっきりした。



「白血病だって」


ポツリと、面の奥であたしは呟いた。

小さな吐息みたいなその呟きは、静かな剣道場に落ち、じわじわと毒のように周囲に広がっていく。



「……え?」


深月のどちらかというと目つきの悪い猫目が、意表を突かれたみたいに開かれる。

間抜けな顔だと思った。昨日の病室でのあたしみたいに。



「知ってた? 白血病って、がんなんだって。血液のがん。映画とかドラマとかでよく聞く病名だけどさ、知らなかったよ。白血病は白血病っていう、がんとは全然ちがう病気なんだと思ってた」