でもこの汚い机の中で、1ヶ所だけわりときれいなままの場所がある。

長くて細い引き出しの部分。ここだけは、ほとんど開けることがないから他よりはきれいだ。


なぜ開けないのか。それは開けたくないからだ。

なるべく目にしたくないものが、出来ることなら一生しまいこんでおきたいものがあるからだ。


緊張で強張る指で引き出しをそっと開ける。

そこには、あの日のままの、薄汚れた封筒が眠っていた。


引き出しの奥にひた隠し、目を背け続けていたあたしの罪。


それを見下ろしながら、スカートのポケットに手を差し込む。乾いた感触を指先にはさめ引き抜いた。

シワがつき、所々折れた手紙。この無骨さが深月らしくて、悲しい。


汚れた手紙の上に、静かにそれを重ねた。

罪がふたつに増えた、瞬間だった。


ひとりきりの部屋、誰にも見られるはずないのに、あたしは急いで引き出しを閉めた。

頭は真っ白だった。何も、考えたくなかった。