友花の名前を口にした瞬間、優ちゃんの瞳が揺れるのがわかった。
「智花が、どうした……?」
優ちゃんの口から智花の名前を聞くのは、何年ぶりだろう。
少し緊張を帯びながら、大切そうに紡がれたように感じたのは、あたしの思い込みからくるものだろうか。
いつからかあたしたちは、ふたりでいる時に智花の話をしなくなっていった。
智花があの日以降、優ちゃんを避けるようになり、最初はそれを気にしていた優ちゃんも、諦めたように智花の存在を忘れていった。
いや、忘れたフリをしてたんだ。誰でもない、あたしがそうさせた。
もし、いま。智花のことを優ちゃんに話したら……どうなる?
それはあの日の罪を償うことに、繋がりはしないだろうか。
やり直すことが出来る……?
「智花が……」
「歩?」
「あの……智花、と」
優ちゃんが、微笑んでる。寂しそうに、ほんの少し、嬉しそうに。
その表情を見て、思った。やっぱりあたしは自己中なんだって。
やり直したいなんて、あたしはこれっぽっちも思ってない。
過去に戻れたとしても、きっとまた同じ選択をする。そう思ってたけど、過去じゃなくてもそれは変わらなかった。


