「そんなつもりじゃない? そりゃそうだよね。自分のことしか考えてないんだから、その結果周りがどうなるかなんて想像も出来ないんでしょ? だから自己中って言うんだよ!」
何も、言い返せなかった。実際その通りだったから。
あたしは自分の好きなことしかしてなくて、それをすることに夢中で、それ以外のことなんてどうでも良くて。
智花のことも、あたしみたいに好きにすればいいのにって思うだけだった。どうしてしないのか、なんて考えようともしなかった。
あたしはあたしが気付かないうちに、自分の好きなことを守ろうとすることで、誰かを傷つけたりしてきたんだろうか。智花以外にも。
「歩にはあたしみたいな人の気持ちなんて、一生わかんないよ」
ギクリとする。一瞬、心の内を見透かされたのかと思った。
でもそれは正しかった。あたしの頭にも、智花の頭にも、きっと同じ人の顔が浮かんでたから。
「完璧な人間なんているわけない。本気でいるんだと思ってるなら、それは周りの押し付けでしかないんだから」
「それって……」
「残酷だよね、歩って」
薄く笑って、智花があたしから目を反らす。
見えない壁が張られた気がした。ううん……ずっと昔から、壁はあったんだ。自己中なあたしがそれに気づかなかっただけ。
「出てって。あたしのことは放っておいてよ」


