君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている


最後まで、すり抜けていくその瞬間まで、この手の平に置いておきたかったんだ。


「別にいいじゃん、このままで。楽しいじゃん。幸せじゃん。少なくともあたしはそう思ってる。それなのに……あんたも、優ちゃんも、あたしにどうなってほしいの?」


深月はあたしから目を反らさない。眉を寄せ、何かを我慢するみたいに身体の横で両手を握りしめている。


そんならしくない深月の様子に、不思議な気持ちになった。

深月のことだから、どうでもよさそうに、興味なさそうに「お前がどうなろうと知ったこっちゃない」とか言うんだと思ってた。

でも違った。深月は何かを必死に考えているように見える。それが不思議だ。


「主将が何を考えてるかなんて、俺は知らない。俺は……」


言葉を区切り、顎を引き、深月がひたりとあたしを見据える。


「もったいないと思ってる」

「……もったいない?」

「悔しいとも思ってる」

「ちょっと待って。……いままででいちばん意味がわかんない」


熱を持った目元を手で覆う。零れる息さえ熱かった。

指の隙間から見える深月は、変わらずあたしを睨みつけている。



「何よりすげー、腹が立つ」



そう言うと、深月はくるりと背を向けて歩き出した。

呼び止めても振り向かず、真昼の住宅街に消えていく。疑問符と小さな苛立ちを、あたしの中に残して。


それは完全な言い逃げだった。