深月も、優ちゃんも、あたしがどこに行けばいいと思ってるの?
あたしはどこかに行きたいなんて思ってないのに。どこにも行きたくなんてないのに。
ただ落ちてくる砂を、止められればいいって。それだけを望んでいるのに。それはそんなにいけないことなの?
冷たいガラスの中、もう胸元まで砂に埋まってしまっている。動けない。動きたくない。
サラサラと落ちてくる砂の音を聞きながら、ガラスの向こうの深月を見つめた。
「もし、仮に、あたしが優ちゃんを好きだったとして……それが何だって言うの? 優ちゃんを好きだって認めて、何になるの?」
幸せになれるの? なれるとしたら、一体誰が?
少なくともあたしじゃない。絶対にそれはない。そんなのあたしは求めてないし、それは優ちゃんだって同じだ。
何もない。そこには何も。
幸せはないし、それどころか元の形にも戻れない。ぜんぶ変わってしまう。なくなってしまう。
あたしが大切にしてきた、両手でしっかりと守ってきた、温かいもの。
いつまで、なんて言われなくたって、それが期限付きのものだってことはわかってる。わかってても、手放せなかった。


