君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている


太陽の下に出た途端、あまりの暑さに一瞬視界が揺れた。


「くそっ。何で今日こんなに暑いんだよ」


あたしを引きずるように歩きながら、深月がぼやく。今日の最高気温はたしか、5月なのに夏日の28度。いまはいったいどれくらいだろうか。

こぼれる寸前で踏みとどまっている涙も、あっという間に蒸発しそうだ。


涙と一緒に消えてしまえばいいのに。この哀しみも、恐怖もぜんぶ。


家の近くまで来ると、深月は足を止めて振り返った。

つかまれたままの手が痛い。汗もかいて気持ち悪いのに、なぜか深月は手を離そうとしなかった。


見られた。泣きそうになったところを、深月に見られた。

腕でごしごしと目元を拭ったけど、涙の跡が目元に残ってとりきれない。拭っても拭っても、ずっとそこに残っているような気がして。



「……泣くくらいなら、認めたらどうだ」


ポツリと、通り雨の最初に落ちて来る、控えめな雨粒みたいな呟きだった。


言われた意味がわからなくて、涙を拭った腕を振り、深月を見上げる。

ぼやけた視界の中で、いつも以上の仏頂面があたしを見下ろしていた。



「主将のことが、好きなんだろ」