君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている


誰よりも優ちゃんの傍にいた。周りもセットで見られていたし、自分でもそう思ってた。

あたしは優ちゃんに全部見せていたつもりだったけど、優ちゃんはきっとそうじゃなかった。

あたしに見せないよう、隠していた部分がいくつかあって、そしてそれはたぶん、あたしの為に。


「優ちゃんがどっか行っちゃいそうで……怖くなる」


行かないで、とは言えない。そういう言葉をあたしは使ったことがない。

でも優ちゃんにはきっと聴こえてる。いつだって優ちゃんはそういうあたしの心の叫びを拾ってくれていた。


白くて大きな手がそっと、あたしの手に重なった。


「歩は変わらないな」


小さな子どもに向けるような笑顔にほっとしかけた。けれど続いた言葉に凍り付く。


「どこにも行かないって言えば、それで安心なのか?」

「優……ちゃん?」


その安心はいつまで続くのか。いつまでそんな口約束に縋りつくのか。

真っ直ぐ向けられた瞳からは、いつもの優しさは消えていた。代わりに光るのは、主将の時のそれに似た厳しさと、他人のような冷たさ。


お前はいつまでそこにいるつもりだ。

砂時計の外側から、そう問われているような気がした。