君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている


「どうした?」


優しく細められる琥珀。あたしが知っている中で、ずっとずっと変わらず傍にあったもの。

やっぱりダメだ。あたしには大切なものを手放す勇気が持てそうにない。


「優ちゃんは……ずっと優ちゃんだよね?」

「なんだよ、本当にどうした?」

「どこにも行ったりしないよね? 優ちゃんは優ちゃんのまま、ここにいてくれるよね?」


スプーンを持ったまま、ぐっと優ちゃんに詰め寄った。

間近から整った顔を覗きこめば、目の下にうっすらと疲れの色を残していることに気付く。


驚いたように瞬きをして、優ちゃんは眉を下げて笑った。仕方ないなというように。


「俺はここにいるだろ? 歩は何をそんなに不安がってるんだ?」

「だって……」


手を伸ばす。優ちゃんの目の下の、皮膚の薄い部分をそっと親指でなぞる。

長い睫毛がピクリと震えた。でも優ちゃんは身じろぎせず、あたしの手を受け入れてくれる。


白い肌をひんやりと冷たく感じるのは、あたしの体温が高いせいだろうか。


「優ちゃんが……最近、なんだかあたしの知らない優ちゃんに見える時があって」


別人ではないけど、でもあたしに見せたことのない部分があったのかって。