「気をつけて帰ってね」
なかなか動かない彼女に、優ちゃんがそう声をかける。たぶん、わざと。
傷つけないように優しく、でもはっきりとした声に、あたしは聞いていて心臓がキュッと縮むような気がした。
優ちゃんはいままで、こんな風に女の子たちの好意を断ってきたのか。
完璧な幼なじみがモテることは、昔から知ってた。でもこういう場面には、実はあまり遭遇したことがない。
告白されているところを遠目に見かけたり、噂で聞いたりすることはあったけど、それだけだった。
だから、優ちゃんのことだから、きっと優しく慰めるように、相手の気持ちを大切にしながら「ごめんね」を言うんだろうなって、勝手に想像してた。
でも実際は、想像とは少しちがってたみたいだ。そのことに、いまはじめて気がついた。
「あ……うん。じゃあ、また」
シャツワンピースの人は、恥ずかしそうに、そして何かを諦めたように俯いて去っていく。
ほっそりした背中を最後まで見送ることもせず、優ちゃんが玄関に足を向けた。
「……よかったの?」
「うん? ああ、歩が気にすることじゃないよ」


