着替えてないし顔も洗ってないけど、別にいいか。優ちゃんとこで洗わせてもらおう。
ついでにこのタッパーの中身も、ご相伴にあずかれるといいんだけど。
なんて卑しい期待をしながら幼なじみの家に向かうと、見慣れた門の前に優ちゃんがいた。でも、ひとりじゃない。知らない女の人と一緒だった。
涼し気なシャツワンピースを着て、可愛く編み込んでアップした髪。小さな耳には銀色に光る細いアクセサリーが揺れている。
優ちゃんになにか話しかけている横顔は、淡く染まって見えた。優ちゃんへの気持ちが目に映るよう。
じゃあ、そんな彼女を正面から見ている優ちゃんは?
優ちゃんも同じように、頬を染めて、溶けるような笑みを浮かべ、相手に熱い視線を送ってるの?
「……優ちゃん!」
それを確認するよりも前に、叫んでいた。
ふたりの間に生まれそうな、柔らかで甘ったるい空気を引き裂くような声で。
ハッとしたように、視線の先でふたりが顔をこっちに向ける。
女の人は気まずげに一歩引いていたけど、優ちゃんは……いつもの優ちゃんだった。
「歩?」


