君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている


じゃあなぜやっているのか。


「……罪滅ぼしみたいなもんかな」


すんなり答えなかったのは、別にもったいぶったからじゃない。

ただ普通に、躊躇っただけ。


なぜこんなことをするのか。その答えはそのまま、あたしの罪の告白に繋がる。

それを他人に、しかも深月に話すなんて、自分でもどうかしてると思う。


誰にも話したことはなかった。

優ちゃんは当たり前として、家族にも、樹里にも、誰にも秘密にしてた。

自分自身にすら忘れたふりをして嘘をついていたようなものだ。


誰にも話すことはないと思ってた。

でも、同時に誰かに聞いてほしいとも思っていたのかもしれない。


自分の罪を、懺悔したかったんだ。

許されるはずのない罪だと、わかっていても。



「……んだよ、それ。意味わかんねーんだけど?」

「だよね~! 別にいいじゃん、理由なんて! あたしは全然平気だし?」

「おい」

「じゃ、急がなきゃだからあたし行くわ!」


まだ何か言いたそうだった深月の視線を振り切って、廊下を駆けだす。

言わなきゃ良かった。話したところで罪は軽くなりはしないのに。わかってたのに。


目をつむれば、瞼の裏に映るのは褪せてくれないあの日の光景だった。