君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている


「あたしならすぐ音を上げて、とりあえず勉強と家事は投げ出すな。優ちゃんじゃなきゃ出来ないよ」

「俺だってそうだけど。……お前、これ以上白木主将に心配かけんじゃねーぞ」


頭の手ぬぐいを取り去って、伸び気味の黒髪をかきあげながら深月が言う。偉そうに。


「まるであたしのせいで優ちゃんが疲れてるみたいな言い方、しないでくんない?」

「気付いてねぇの? お前からの負担ってけっこうでかいと思うけど」


深月が答えた瞬間竹刀を振りかぶる。

それをあっさり防がれて舌打ちしたところで「また黙想したいのか?」という優ちゃんの声が入り口から響き、あたしたちはにらみ合いながら距離をとった。


「人のこと言えないくせに。万年赤点男」

「お前それブーメランだってわかってるか? 万年赤点女」

「じゃあ次のテスト、赤点の数で勝負する?」

「いいだろう。どっちが赤点少ないか勝負だ」


睨み合っていたらまた離れたところに立つ優ちゃんに「赤点の数より、得点の高さで競ってくれ」と嘆かれる。

確かにそれはもっともなんだけど、自分の実力をよく知っているあたしたちは、どちらも赤点を取らないとは口にしなかった。