あたしも深月も、強くて優しくてかっこいい優ちゃんに弱い。
結局あたしも忠実な犬のひとりってこと。
「歩はがんばってるよ」
「優ちゃん……!」
「がんばってても弱いってどういうことっすか」
「うっさい深月」
優ちゃんは腕を組んで、笑ながら首を傾げる。
「別に歩は弱くないよ。ただちょっと、意思が足りないのかな」
「意思?」
「そう。強くなりたいとか、絶対勝ちたいっていう、揺るがない意思みたいなもの」
揺るがない意思、と言われてもピンとこなかった。
あたしだって強くなりたいし、勝ちたいと思ってるんだけど。
でも別にいいじゃん、とも同時に思う。
ものすごく強くなる必要なんてなくて、楽しければいいんじゃないの?って。
「あー、なんとなくわかるっす。こいつなんも考えてなさそうですもんね」
「なにさ。あんたは優ちゃんのことしか考えてないくせに」
「はいはいはい、ケンカはもういい。俺も手伝うから、掃除終わらせよう」


