「なるほど。納得しました。アホは余計なこと考えないよう、1つだけに集中しろってことっすね」
あたしじゃなく、深月が納得するってどういうことだ。しかもまたアホって言ってるし。
ムッとして、あたしは二人に向かって腕を組んで見せた。
「結局あたしはバカにされてるってこと?」
「バカにされてるんじゃなく、実際バカなんだろ」
「なにをぅ、初心者のくせに!」
互いにまた竹刀を向け合うあたしたちの間に「こらこら」と優ちゃんが割って入る。
「バカになんてしてないだろ? 今年のお前に期待してるんだよ、俺は」
「期待って言われても、わかんないよ。口で言われてもムリ。優ちゃん、稽古つけて!」
「あ、ずりぃぞ! 主将! 俺とやってください!」
「ちょっと、あたしが先に言ったんだから!」
またケンカを始めそうになるあたしたちに、優ちゃんも少しあきれたように「いい加減にしないか」とため息をついた。
その時の顔が少し、疲れて見えたような気がして竹刀を持った手を下ろす。
「優ちゃん?」


