懐かしさにひたっていたあたしに、深月がいつもの調子で茶々を入れてきた。
この男はどうしてこう、いちいち人をバカにするような言い方しかできないんだろう。
過去から現在に戻ってきたあたしの前に立つ優ちゃんの瞳は、あの時と少しも変わらない優しい色をしていた。
「でも自分でこうと決めた時の歩は、強いよ」
あの時もそうだった、と優ちゃんは言う。
でもあの時がいつのことを、何のことを指しているのかあたしにはわからなかった。
話しの流れ的に、再婚した頃のこと? でもあの時、あたしなにか決めたっけ?
「いまの歩は、あの時と同じ顔してる。これなら大丈夫そうで安心した」
「大丈夫って、何が?」
「大会だよ。ちゃんとした実力を発揮してほしいって、ずっと思ってたからな」
「ああ……前言ってた、ムラがあるってやつですか?」
「そうそう。試合に万全の状態で持ってくのが難しくて、いつももったいないと思ってた。もっと上に行けるのにって」
優ちゃんの言葉がキラキラとしたものに変化して、あたしの胸に飛びこんできた。
それは温かくて、くすぐったくて、目に映るものを色鮮やかにした。


