「大丈夫、歩?」

「樹里……痛いとこ、ない?」

「ないない、全然ない!」


もう一度あたしに「平気だからね」と念押しするように言って笑う。その笑顔を見て、自分がものすごくちっぽけで、情けなく思えてしまった。

階段から落とされそうになったばかりなのに、樹里はこんなにもあたしに優しくしてくれて。


なにやってるんだ、あたしは。


「ほんとにごめん」

「だからいいって! あたしも階段の途中で不注意だったし。怪我もしてないんだからさ」


でも深月が下にいなかったら、確実に樹里に怪我をさせていた。最低だ。

なんだかすべてが上手くいってない気がする。全部自分のせいだから、始末に負えない。


このままじゃ、ダメだ。あたしにとっても、周りの大切な人にとっても良くない。

後悔するようなことになる前に、どうにかしなきゃ。


短くお腹の底から息を吐き出し、逆に気合をそこに溜めるようにして立ち上がる。

スカートの裾をパンパンと軽く払ってから、すぐ下にいる樹里を真っすぐに見つめて、頭を下げた。


「ごめんなさい」

「……わかった。わかったから、顔上げて」