「や、矢田くん……?」
「危ねぇな。何してんだ」
それは樹里にかけられた声じゃなかった。黒い猫目はきつくあたしを睨みつけている。
呆れよりも責めの色が濃い気がして、キュッと唇を噛みしめた。
「ご、めん」
「それは俺に言うんじゃなく、高橋に言え」
「いや、わたしは大丈夫! 全然平気! ありがとう、矢田くん」
身を起こして、少し照れくさそうに深月から離れる樹里。
深月は樹里がしっかり自分で立ったのを確認してから、あたしを睨んだまま階段をのぼってくる。
「お前、いい加減にしろよ」
「……なにが」
「色々雑すぎるぞ。見ててイライラする」
吐き捨てるように言って、あたしの脇を通り過ぎ、階段の上へと消えていった。
その大きな背中に何も言い返すことが出来ず、へたりこんだままうなだれる。色々雑、か。その通りだ。
イライラしてるから、雑になる。それを間近で見ていた深月も、あたしと同じかそれ以上にイライラしてたわけか。
だから部活中も体当たりでぶつかってきた。お互いいくつか痣も作ってる。
止めようと、してくれてたんだ。


