君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている


「だったら、もういいじゃん。断りにくいんだったら、あたしからも皆に言うし……」

「だから、いまさらなんだって!」


なだめるように樹里が手を伸ばしてきたから、咄嗟にその手を振り払ってしまった。

樹里の瞳が大きく見開かれる。同時に華奢な身体がうしろに傾いていった。


「あ……っ」


ちょっと羨ましかった、樹里の絹みたいに艶々な黒髪が宙に広がる。


伸ばされたままだった手を、掴もうとした。なのに、自分の動きがひどく遅い。

どうして。あたしの身体は、もっとはやく動くはず。



「樹里……っ!」


触れ合いかけた指先は、無情にも離れていく。どうして。

ただ驚きに目を見開いたまま、樹里が落ちていく。自分も一緒にそこへ行く勇気も出ないあたしは、安全な手すりを無意識に掴んで、立ちすくむだけだった。


あたしのせいなのに。あたしの。


「きゃっ!?」


頭が真っ白になった時、樹里の短い悲鳴が聞こえて我に返る。

目の前には呆然と固まる樹里と、踊り場にぶつかる直前に樹里をしっかりと抱き留めた、深月の姿があった。


へなへなと、手すりをつかんだまま階段にしゃがみこむ。腰から下の力がすっかり抜けていた。