君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている


「好きな人いない、歩みたいな子の方が珍しいよ。しっかし……」


階段をのぼりながら、すれ違った手を繋ぐカップルに樹里がちょっと呆れたような目を向ける。


「増えたよねー、カップル。剣道小町のおかげで」

「剣道と全然関係ないけどね。あちこちでそのあだ名で呼ばれるから、恥ずかしくて逃げたくなる」


移動教室で廊下を歩くたび、あちこちで囁かれ、たくさんの視線に囲まれる。

こんなのちょっと前まではありえないことだったのに。


あたしが何をしたっていうのか。ただ手紙を渡しただけじゃん。

それがたまたま良い結果になっただけで、あたしが特別な力を発揮したわけじゃない。そんな力そもそもないし。


「……歩、最近イライラしてる」

「え? ……そうかもね。疲れてるのかも。予選終わったけど県大会に向けて練習はどんどん厳しくなるし、それなのに日中はこんなことしてるし」


いまも手紙を渡しに行った帰りだ。今日はこの1通だけだからまだマシな方。

休み時間も充分残ってるし、はやく教室に戻って寝たい。どうせなら午後の授業中も寝続けたい。


「じゃあさ……もう、やめちゃえば?」

「はあ?」