あたしも男だったら、ふたりの立つその場所へ行けただろうか。
女じゃなければ、あたしも。ふたりに肩を並べることができただろうか。
満足な試合も出来なかったくせに、そんなことばかり考えるあたしには不可能か。例え男になれたとしても。
ふたりの気合が声に乗り、体育館の天井へと突き抜ける。
ビリビリと空気が震え、観客の身体から心まで響いていく。
「練習しなきゃ……」
ふたりの勝負を見たあと、いつも思う。
もっと練習しなくちゃって。もっとちゃんとやって、ふたりに追いつかないとって。
そうじゃないと、あっという間に置いていかれる。
触発されてやる気を出すより、そんな不安と恐怖があたしの尻を叩くんだ。
余計なことに気をとられてる場合じゃない。
練習だ。練習しなきゃ。
急かされるように気持ちが剣道へと走っていた。
やっぱり愛とか恋とか、そんなものに割く時間なんかない。あたしにはもっと大切なことがある。
拍手が起こる、旗が上がる。
試合は決した。
残り1分というところで1本を取ったのは、前年度の優勝者だった。


