君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている




熱気と独特の匂いがこもった体育館。

眩しいライトの下、あちこちから奇声じみた声が上がっている。

応援席からの拍手に不躾な声援が混じっていたり、スマホの着信音が鳴り響いたり、他校の監督の激励がうるさかったり。


いつもなら気にならないものが妙に気になって、神経に引っかかる感じがして、支部予選の初戦から嫌な感じだった。

それでも順調に勝ち上がり、次はとうとう決勝。


「行ってこい!」


パンッと勢いよく背中を張られ、前につんのめる。叩いた優ちゃんが笑顔だったから、あたしも面の下で笑顔を返し、畳から一歩踏み出した。


コートに入り、相手選手と向かい合う。一礼して3歩、開始線まで進み竹刀を抜いて蹲踞。

この一連の動作が、昔からとても好きだった。


「始め!」


主審の宣告と同時に素早く立ち上がり、早速剣先を交える。

相手の素早い足さばきに遅れないよう、前へ前へ、先を打つ。


あたしは普段から男子相手に練習してるから、鍔迫り合いは慣れてるけど、女子はちがう。身体でぶつかることにあまり慣れてない。