君への最後の恋文はこの雨が上がるのを待っている


あたしは慌てて優ちゃんに飛びつき、どこか儚げな整った顔を見上げる。


「考え直そう、優ちゃん! その方がいい!」

「まだ何も言ってないだろ?」


苦笑され、大きな手になだめるように頭を撫でられる。昔から優ちゃんはこうして、よくあたしの頭を撫でてくれた。

マメを繰り返し作ってきた、固くて大きな左手。この手の固さと温かさに、あたしはいつも安心をもらってた。


「そうっすよ。それにそういう話はまだ早いんじゃないですか? 予選も始まってないのに」

「そうだよ優ちゃん! インターハイは8月だよ! まだまだ先の話じゃんっ」


優ちゃんは個人でのインターハイ出場は確実だ。深月も可能性はなくはないけど。

団体戦だって、このふたりがいれば今年こそ行ける気がする。去年は実際準決勝まで行ったんだから。


あたしは……団体戦はないし、個人戦もまあ、予選上位が目標といったところだ。


「そんなに怯えなくてもいいだろ? いつかは来るんだ。引退の時は。中学の時だってそうだったじゃないか。歩、もう忘れたのか?」

「だって中学の時は、引退しても優ちゃんずっと練習出てたし」


でも、今回は違うんでしょ?