「おい、何する気だ」
窓枠に手をかけたあたしの肩を、深月の大きな手がつかむ。
止めようとしてるんだろうけど、おかまいなしに固い鍵を開錠して、窓を思い切り開くと、身を乗り出すようにして外に向かって叫んだ。
「その告白、ちょっと待ったーっ!!」
青一色の空に響き渡るような声に、眼下のふたりがギョッとこっちを仰ぎ見た。
さすが、剣道で鍛えたあたしの発声もなかなかのもんだ。でも満足してる場合じゃない。
「いまそっち行くんで、告白の返事は待ってください! ほんと、すぐ終わるんで!」
「押し売りみたいだな」
「うっさい。ほら、行くよ!」
先に駆けだしたあたしの背中に「だから俺もういらなくね?」という声がかけられたけど、あえて無視する。
階段を2段飛ばしで駆け下りて、1階の廊下からまた窓を開けて、あたしはふたりの目の前に飛び降りた。
上靴のままだけど、あいにく靴を履き替えてる余裕はない。このままじゃ間に合わない。
間に合わなかったら優ちゃんに怒られるし、稽古に参加させてもらえない。そんなのもうごめんだ。
「吹奏楽部の奥寺先輩にお届けものですっ!」
息を切らしながらそう叫び、目の前のふたりを睨みつけた。
焦りと疲れとイライラで、叫ばずにはいられなかった。