腕を掴んだままだったから、反動で後ろに危うくひっくり返りそうになる。


「あ……っぶな! ちょっと! 急に止まんないでよ!」

「いた」

「はあ? 痛いのはこっち……」

「ちげぇよ、バカ。ほら」


深月に両手で頭を掴まれ、力任せにぐいっと窓の方に顔を向かされた。

急に首を捻られて変な音が鳴った。口で言え! と文句を言いかけて、窓の外の人影に気付きハッとした。


男女がふたり、校舎の外で向かい合っていた。

緑の生い茂る木の下、微妙な距離感で。離れたここにも、緊張感が届いてくるような雰囲気だ。


男子の方は随分と明るい髪色をしている。進藤くんの茶髪より、ずっと自然できれいな栗色の髪。


「もしかして……あれって」

「奥寺先輩だな。しかもたぶん、告白されてる真っ最中」


それはまずいと、真っ先に思った。だっていまあの女の子が奥寺先輩に告白して、先輩がOKしちゃったら、この手紙受け取ってもらえないかもしれないじゃん。

さっきの鈴木くんみたいに、彼女がいるから、とかうだうだ言い始めるかもしれないじゃん。

もう時間がないのに、冗談じゃない!