深月はニヤニヤ笑ってうなずいた。
「あーナルホド。そりゃ納得だわ。お前ってたくましいもんな」
「剣道弱いけど」と付け加えられて、再びモップ剣をお見舞いしたけど、やっぱり軽くいなされてしまった。
くそ、あたしより剣道歴短いくせに。
男女の体格差を考慮しても、くやしいけど深月の方が剣は上だ。
生まれ持った才能というか、センスがちがう。
あたしは凡人のそれだけど、深月は10年にひとりの逸材とか、そういうやつ。
でも、上には上がいる。
うちの部には10年にひとりの深月より、更に上の部員がいるのだ。
もう1度モップを振り上げた時、剣道場の外から女子の悲鳴みたいな声が聴こえてきて、深月と目を合わせる。
「あの人が来ると、すぐわかるな」
深月の言葉に、深くうなずく。
すぐに剣道場の扉が開かれて、あたしたちと同じ練習着姿の細身の男子生徒が現れた。
柔らかそうな栗色の前髪が、歩くたびにさらりと揺れる。
「こら、ふたりとも。モップは遊ぶものじゃないぞ」


