「ふーん」
不服そうな顔を浮かべる凛くん。
これ以上追求されたくなくて、私は俯いて顔を隠した。
「カップケーキくらい、また作りゃいいだろ」
「え?」
「だから、カップケーキ落としたくらいで泣くなってこと」
そう言って、地面に転がっているカップケーキを指差した。
さっきの会話……もしかして、聞かれてなかった?
今の言葉を聞く限り、このカップケーキはファンの子が台無しにしたのではなく、私のドジで落としたと思っているらしい。
まさかの好都合な勘違い。
私がドジしたのはあながち間違ってないし、凛くんがそう思うならそれが事実に書き変わっても構わなかった。
あとは「そうだね」と素直に頷くだけ────。
「っ………」
だったのに、素直に受け入れることができなかった。



