極悪プリンスの恋愛事情



無理に笑った方が味落ちそうだけど…………。


「へ、へへ…」


とりあえず皐月の言うとおり、今できる笑顔を全力で浮かべてみた。

言い出しっぺの本人からは「うわぁ……」と、あからさまに引いたような声が聞こえてきたけど。


「ひど!皐月が笑えって言ったんでしょ!」

「さすがにその笑顔はキモい。相崎にプレゼントするんだ!って気持ちで頑張ってよ」

「凛くんに?」

「助けてくれてありがとう!とか理由つけてあげれば?」


な、なるほど………。

さすが皐月!その手があったか!


「わかったよ!私頑張る!」

「おー、頑張れ頑張れ」


皐月の口車に乗せられたとも知らず、気合いを入れてゴムベラを持ち直した。


料理上手な凛くんからしたら、私の作ったケーキなんて美味しくないかもしれないけど……。


食べてくれるといいな。