極悪プリンスの恋愛事情



「あっぶね……」


すると次の瞬間、私の体がふわりと浮くような感覚がして。

耳元で響いた声に驚いて「んえっ!?」と、情けない声が漏れた。


「ったく……心臓に悪りぃ………」


ついさっきまで女の子に囲まれていたはずの凛くんが、転びそうになった私を抱きかかえるように助けてくれていた。


ううう、う、嘘っ…………!?

凛くんが私のこと……だ、抱きしめてる!?


とんでもない悲鳴を上げるファンの子たちの声よりも、自分の心臓の音がよっぽど煩く耳に響いた。


「え、あ………っと………」


ありがとうって……言わなきゃいけないのに、急展開すぎて声が出ない。


そんな私を見兼ねてか、


「気をつけろよ。バカ」

「わっ!?」


コツンと、凛くんの拳が額に当たった。