極悪プリンスの恋愛事情



っ…………!?

すぐに視線を逸らしても、もう遅い。


これまで一度も目が合ったことなんてなかったのに、なんで急に…………。


「今さ、相崎のやつ静香のこと見てなかった?」

「みみみみ見てない!気のせいだって!」

「えー、そう?」


皐月が不満げに首を傾げたけど、私はそれ以上何も言えない。


相崎くんにとって、告白なんて日常茶飯事なんでしょ?

それなら、なんで私を気にかけるような素振りを見せるの?


このまま無かったことにしてくれれば、それでいいのに。


自分の席に座っても尚、女の子たちに囲まれている相崎くんに、ひっそりと視線を向けた。


「意味わかんないよ…………」


ぽつりと呟いた言葉は、誰にも届くことなく騒がしい教室に消えていく。


結局それ以上相崎くんと目が合うことはないまま、時間はゆるやかに過ぎていった。