極悪プリンスの恋愛事情



ドアの前に立ってから一度だけ振り返る。

凛くんはもうこちらを見ていなかったけれど、それでもいいと思った。


「………ずっと、好きだから」


最後に溢した私の本音。

どうしてこんなことを口にしたのか、自分でもよくわからない。

わからないまま、逃げるように保健室を出た。


「……岸本くんに電話、しないと」


ぽつりと独り言。

ポケットにしまい込んでいたスマホを取り出して着信履歴を開く。

歩きながら通話ボタンを押したら1コールで繋がって驚いた。


「あのっ………花野井、です」

『あ、ようやく出てくれた。電話切るなんて酷いじゃん』


「ちょっと電波悪かったみたいで……」

『そうなの?まぁ、いいけど』


苦し紛れの言い訳なのは、恐らく岸本くんも気づいてる。

知らない振りをしてくれるのが岸本くんの優しさで、私はいつも甘えてばかりだ。