極悪プリンスの恋愛事情



「………もういい。疲れた」

「え……?」

「さっさと瑛斗のとこ行けよ」


トンッと体を押されて、足元がふらついた。

状況を理解するまで数秒。こちらを見据える凛くんの瞳に、私の姿が映っていないことに気がつく。


……どうして。

目の前が真っ暗になる。


私は自分が持ち出した賭けに負けたんだ。

きっと今なら分かり合えるって安易に走り出してしまったから。

凛くんは何も答えないことを選んだ。この先も私は必要ないって。


「っ……………」


目尻に浮かぶ熱いもの必死に堪える。

だめ。泣くな。

ここで泣いたら全部台無しになる。


「わかった……」


喉の奥から絞り出した声は酷く震えていた。

そのまま凛くんに背を向けてベッドから離れる。

ふらふらとおぼつかない足取りのせいで、自分でもちゃんと歩けてるのか不安だった。