極悪プリンスの恋愛事情



「凛くんにはないの?」

「なにが」

「自分の気持ち以上に勝ってるもの」



今の問いかけに明確な意図はなかった。

流れで言っただけの何気ない会話のつもり。


まぁ、何か言って欲しいかなくらいは思ってたけど。


ギシッ…とベッドが揺れた後に、

────抱きしめられるとは夢にも思わなかった。



「凛………くん…………?」


呼吸もままならない口元で絞り出した声。

ドッドッドッと心臓が変な音を立てるから、余計におかしくなりそう。


背中から伝わる熱。鼓動。息遣い。

全身の力を奪われてクラクラと目眩がした。



「俺にもあるよ。でも言わない」

「どうして……?」

「欲しがったら傷付けるってわかってるから」


ぎゅっと、抱きしめる力が強くなる。

その想いに応えるように凛くんの腕に手を添えた。