何をするわけでもなく、足をぶらつかせるだけのぼんやりとした時間が流れ出した。
静かな空間に響くのはカチカチと音を鳴らす秒針と窓を叩く風の音。
布団の擦れる音が聞こえてないから、凛くんも起き上がったままなんだと思う。
この後私は何をしたらいいのかな。
凛くんが保健室を出るのを待って、また追いかければいい?
追いかけた後は?また黙ったまま?
その後は…その後は……どうすればいいんだろう。
ぐるぐると頭を悩ませていた矢先、凛くんの声が聞こえてきた。
「……花野井はさ、俺のことが好きで辛くねーの?」
背中越しに届いた言葉に驚く。
私には何も教えてくれないくせに、変なこと聞かないでよ………。
正直ずるいとは思ったけど私が口を紡ぐ理由もなかった。
「辛いよ。でも、それ以上に好きが勝ってる」
これはただの執着心なんかじゃない。
凛くんに拒絶されたあの日、気持ちをぐしゃぐしゃに潰された自分が惨めで仕方なかった。
なんでここまで言われなきゃいけないの、とか。
被害者ヅラするのやめてよ、とか。
ちょっとだけ恨んだりもした。
それでも嫌いになれなかったのは、並べた理屈以上の気持ちで、恋焦がれていたことに気づいたから。



