極悪プリンスの恋愛事情



「…………花野井に言えることは、何も無い」


凛くんの心は揺るがなかった。

俯いたまま「ごめん」と呟いて口を閉ざされる。


だめだな、私……………。

せっかく岸本くんに背中を押してもらったのに、何も変えることができなかった。


これ以上どうしろっていうの。

限界を決めたいわけじゃないけど、拒まれたら勝ち目なんてない。


次の言葉を探しているうちにスピーカーからチャイムが流れた。


動かない私を見兼ねて「授業始まるけど」と凛くんが呟く。

首を横に振り「行かない」とだけ答えた。


「……さぼんの?」

「うん」


「俺がここにいるから?」

「うん」


「怒られても知らねーよ」

「うん」


今日はずっとサボりっぱなしだもん。今更どうだっていい。

近くにあった椅子を引っ張って、凛くんに背を向けて座った。



………出て行けって言わないんだ。

てっきり追い出されると思ってたのに凛くんは何も言わなかった。

それが嬉しくて、少しだけ悔しい。


私ばっかり凛くんに恋してる………。