「起きてよ、バカ」
無防備な凛くんの頬に触れた。
その直後。
「起きてるけど」
目を開いた凛くんと視線が重なった。
澄みきった茶色の瞳に囚われて、途端に体の自由を奪われる。
もしかして、今の全部聞いて─────。
「バカってなんだよ」
戸惑う私に追い討ちをかける一言。その言葉でようやく状況を理解した。
「ひゃあ!?」
弾かれるようにドスンと床に尻餅をつく。
「痛てて…」と腰をさする私を見下ろして「バカはお前じゃん」と鼻で笑われた。
うぅ……恥ずかし……。
たしかに起きてとは言ったけど、起きてるとは思わなかったんだもん。



