「じゃ、たしかに返したから」
すると相崎くんは、私にドキドキだけを残して背中を向けた。
離れていく後ろ姿に「あ……」と小さく言葉が漏れる。
もっと話していたかった。
もっと一緒に居たかった。
この会話が最初で最後だなんて寂しいよ。
私は相崎くんに話しかける勇気なんて、これっぽっちも持ち合わせていないけど、特別になりたいって想いは毎日のように募っていく。
どうせ嫌われてるなら、一度くらい言ってみてもいいんじゃないかな。
一言だけでも伝えてみたら、明日から何かが変わるかもしれない。
見てるだけじゃ足りない。
もっと、相崎くんの側にいたい。
そんな考えが頭の中をぐるぐる駆け巡って、気づいたときには、ガタンと椅子から立ち上がっていた。



