極悪プリンスの恋愛事情



「花野井ちゃん、おはよ!」


凛くんの姿がちょうど見えなくなった頃、背後から肩を叩かれる。

この明るく爽やかな声は岸本くんだ。


「岸本くん………おはよ……」

「あれっ、なんか元気ないね?」


「そ、そうかな……」

「なんか無理してる感じするなぁ。凛も俺を置いて先に行っちゃうし、なんかあった?」


核心をつかれてドキッとした。


恐らく岸本くんは私たちの間に何があったかを知らない。

適当な嘘をついて誤魔化せば、きっと知らないふりをしてくれると思う。


迷惑も心配もかけたくないからこの場限りの嘘をつこう。

そう決めた途端───────。


「岸本くん……あの、私………」


堪えていた涙をあっさり零してしまった。


「え!?花野井ちゃん大丈夫!?」


前触れもなく泣き出した私を前に、岸本くんが困惑してる。

私は溢れる涙を止めようともせず小さく嗚咽をあげた。


「えーっと………中庭!あっちの中庭行こう!」

「っ、あ……、でも、授業…始まっちゃう…………」

「いーよそんなの!たまには2人でサボろうよ」


そう言って、私の手を引きながら廊下を抜けていった。