極悪プリンスの恋愛事情



こういうとき、なんて声をかけたらいいんだろう。


涙の原因は間違いなく私だから、彼の言葉に頷いてあげるのがきっと最善。

最善で、いちばん残酷な選択。


「…………」


声、出ない。

呼吸するたび唇が震えた。

どうにか抑えようと下唇を噛んでみたけど、何も変わらなかった。



「花野井」


凛くんが私の名前を呼ぶ。

名前を呼んでもらえるだけで嬉しかったはずなのに。



「俺のこと、嫌いになって」



紡いだ言葉が胸を突き刺す痛みに変わった。


無理だよ。ずっと好きだもん。

そう言いたいのに、言葉にはできなかった。


最後に「ごめん」と呟くと、私の横を通り過ぎて手の届かない場所まで離れていく。


だめ、行かないで………。