バッと振り返って、息が止まった。
相変わらず無愛想で不機嫌極まりない相崎くんが、こちらをじっと見ている。
ど、どうして相崎くんがこんなところに…………。
ていうか、帰ったんじゃなかったの!?
「それ、忘れもん。花野井が風邪引いても俺のせいじゃないからな」
そう言って、相崎くんがだるそうに髪をかき上げた。
あれ………。
けれど私にはその仕草よりも、相崎くんが言った言葉の方が無性に気になって仕方がない。
だって今、私のことを花野井って………。
聞き間違いとは思えないほどはっきり聞こえた私の名前。
まさか相崎くんの口から私の名前を聞ける日が来るとは思ってもみなかった。
「私の名前、知ってるの……?」
「は?クラスメイトなんだから当たり前だろ」
………当たり前じゃないよ。
相崎くんに名前を呼ばれたい女の子が、この学校にどれほどいると思ってるの。



