極悪プリンスの恋愛事情



駅の中心に飾られたクリスマスツリーの周りは多くの人で賑わっていて、みんな幸せそうな顔をしている。


「ほんとだ、綺麗だな」


ぽつりと呟く凛くん。

きっと彼は、私が足を止めた本当の理由に気づいていない。


クリスマスツリーなんてただの口実。


たまたまそこにあったから、利用させてもらっただけ。

何かに頼ってでも勇気を出せる空間を作り出したかったから。



「ねぇ、凛くん」


震える口元で大好きな人の名前を呼ぶ。

こんなの別に初めてじゃないのに。初めて凛くんと話をした時のような感覚。


「ん?なに?」


けれど、聞こえる声色はあの日と同じではない。


私と凛くんの関係が最初の頃とは全然違うから。

自惚れなんかじゃないよ?だって、さすがにわかるもん。


私を見る凛くんの瞳が変わってることくらい気づいてる。


だから言うの。今、君の気持ちが知りたいから。