今の、凛くんからしたら私と間接キスしたことになるんだよね?

……嫌じゃないのかな。


答えを求めるように凛くんをじっと見つめてみる。



「なに?」


しかし、返ってきたのはいつも通りのそっけない言葉。

意図を読まれないよう「なんでもない」と、適当なセリフで誤魔化した。


凛くんの反応、いつも通りだ。

平然とした振る舞いに少しだけがっかりする。


デートに誘ってくれたのは一応凛くんからだし、私のことちょっとは意識してくれてるかなって思ってたのに。


期待しすぎちゃってるかな。


間接キスなんて言い方を変えればただの飲み回し。凛くんにとっては特に意味を持たないことだったのかもしれない。


たった一つの出来事にこんなにも悩んでしまうなんて、片想いはつくつぐ面倒くさいものだ。


両想いだったら何も考えなくてすむのに………。



「あ、そろそろ映画始まる時間だよな」


こっちが一生懸命悩んでいるというのに、マイペースな凛くんは「行くか」と、普通のテンションで声をかけてくる。


バレたくないから別にいいけど、なんだか複雑な気持ち。

ドキドキしてるのって私だけなのかな…………。


凛くんの言葉にこくりと頷いてから、前を歩く彼の後を追った。