「あーあ、デートのこと凛に言わなきゃよかったな。本気出してんじゃねーよ、バカ」
顔は笑っているのにどこか寂しそうな岸本くん。
凛くんは何も答えなかった。
何も言わずに私の腕を引き、廊下の奥へと歩いていく。
「え、ちょっと凛くん!?」
呼び掛けても返事はない。
返事もないし、離してもくれない。
背中越しに皐月の声が聞こえた気がしたけれど、振り向く余裕もなかった。
「あの、凛くん………!」
性懲りもなくまた名前を呼んでみる。
もちろん反応はなし。
どこに行くつもりなんだろう。
わからないことだらけで頭がパンク寸前だ。
帰ったかと思えばまだ残ってるし、私のこと勝手に連れ出すし、テストは満点だし………………。
凛くんはたしかに頭いいけど、学年1位を取ったのは初めてだと思う。
典型的なやればできる子タイプだから、ある程度手を抜いて楽してるイメージ。
だから余計に驚いた。
面倒ごとを嫌がる凛くんが、満点を取るくらい真面目に勉強をしたことに。



